Chu-Moyアンプをリベンジしてみる(延長戦)

私の作例をそのまま製作した人はいないと思いますが、気になりだすと夜も眠れなくなるので訂正します。


回路図(訂正版)

増幅率を変更しました

4.2倍から3.2倍に小さくしました。


以前の増幅率は4.2倍もあり、実際に使用するときはボリュームをだいぶ絞って使うことになりました。
ボリュームが8時や9時のあたりでは、左右で音量が違いがち*1になるところをつかうことになります。
10時から2時はギャングエラーの少ない領域なので、できればそこを中心に使いたいです。
これをいくらかでも解消するために1倍程減らしてみました。
なお増幅率を減らした為、以前より発振しやすくなっていると思います。
Zobelフィルタは必ずつけてください。


なお出力オフセット電圧は、以前の0.4mVから0.1mVに更に小さくなります。
テスタは秋月扱いのMASTEC MS830Lの200mVレンジで分解能は0.1mV(100uV)ですので、ほぼ測定不能の領域です。

ボリュームを変更しました

音質で定評のあるLinkmanのRD925G 10K(Aカーブ)に変更しました


20Kのボリュームを複数個所持しているので、バラック組みでの実験ではそれを使いましたが、せっかくなので変更してみました。
入力インピーダンスオペアンプの+入力手前のR1/R6になりますので、これから大幅に外れない値が適切になります。
20Kよりは10K、もし用意できるなら5K(Aカープ)*2がベストです。

オペアンプ電源のパスコンをフィルムから積層セラミックコンデンサに変更しました

先日Zobelフィルタを外して使ってみたところ、長時間つかっていられませんでした。
ということは、おそらく超高域で発振があったのではないかと思います。
前の回路ではZobelフィルタがついていたため発振することはなかったようです。


検索してみてわかったのですが、フィルムに限らずコンデンサは誘電体と絶縁体をぐるぐる巻いて作る構造です。
ぐるぐる巻いた電気の通るものは、基本的にコイルとしての特性を持つそうです。
コイルというものに電流を流し込んだり流したりするとなにがおきるかというと、逆起電力が生まれて電圧波形がぐにゃんぐにゃんになります。
IC/オペアンプ直近の電源としては不適だそうです。
積層セラミックを推奨します。
ハイ上がりのピーキーなチューンが好みの方は、メタライズドポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルムなどお好きなぐるぐる巻きを使ってください。

Zobelフィルタの値を変更しました

前は0.1uF+10Ωですが、0.047uF/4.7Ωにしました。
スピーカ用の一般アンプでの値が0.1uF/10Ωでしたのでそれで決めうちしていましたが、どうも高音の微妙な細かい表現が掻き消えさっぱりとする印象がありました。
ローパスフィルタとして計算してみるとカットオフは159kHzでした。
最近主流の192Khzのハイレゾ音源の場合は、高域がカットされてしまいます。
外してしまってもよかったのですが、万が一発振すると耳にダメージがありそうなので、カットオフを720kHz*3に変更しました。


もっとも192Khzまで再生可能なヘッドフォンなんか存在するのか?とも思うのでなんともいえません。
また考え方がそもそも間違ってる*4のかもしれませんが、軽くすることで『音は前よりきらびやかになります』。

わからない。
前と違うのは確かだけど、よくなったとは言える自信がない。
単に可聴領域外のノイズが鳴ってて、雑身が聴こえてるのが音が太くなってゴージャスとか勘違いしているだけかもしれない。


なお、Zobelで使うコンデンサはフィルム系を使ってください。
セラミック系だと音がボロボロになります。
とりあえず、フィルタはフィルム、パスコンはセラミックでやるとトラブルが少ないように思います。

3日くらい経って耳の疲れが落ち着いてから再度視聴してみました

ここは失敗です。
元の方がマシでした。
全体的に雲がかかったようといいますか、ボリュームが失せてるような気がします。
抵抗とコンデンサの両方で比較してみたばあい、抵抗値が大きいほうが音が曇らないような感じです。
ということで今現在は0.047uF+10Ω、カットオフは前の作例の倍の338khzで、当分使ってみます。
前の0.1uF+10Ω/159Khzでも問題なかったので、0.047uF+22Ωでも問題ないと思います。

オペアンプの帰還抵抗に位相補償コンデンサをつけました

これをつけることで高域のピークが解消され『キンキン感が抑えられ、低音が適度にでてきます』。


C9/C10に6pfの位相補償コンデンサをつけました。円盤型のセラミックコンデンサでいいです。
このコンデンサをつけないで使う場合、100Khzをはるかに超えた超高周波領域の出力レベルが上がります*5
4580DDのように音響用として開発されたオペアンプは、入力段の差動増幅回路の近辺に位相補償コンデンサが挿入されており、帰還抵抗とオペアンプコンデンサによりLPFが形成されます。
帰還される電流信号にLPFがかけられるということは、高周波領域の帰還量が減るわけで、結果として出力の高周波領域にピークがでるそうです。
詳しいことは、トラ技2012年7月号『徹底調査!売れ筋No.1』の、オペアンプ編NJM4580DDのページ他を読んでください。


なお、これはNJM4580DDに調整した値であり、他のオペアンプの場合はそれにあわせて調整しなければなりません。
不要なものもあると思います。

出力抵抗にコイルをつけました

アイソレータ回路をつけました。


よくわかりませんが、位相回転を防ぐ効果があり、発振防止につながるそうです。
このアイソレータ部分により、音声信号は高音域は抵抗を通過し、低音域はコイル側を通過するらしいです。
ということは低音の再生能力もあがるかもしれません。
よくわかってませんがつけてみました。
ラジアルリード(アキシャルリード)タイプのマイクロインダクタでいいはずです。
なくてもいいかもしれません。


なお出力抵抗は47Ωから33Ωに変更しています。
これは私が主に32Ωのヘッドフォンを使うためです。64Ω以上のヘッドフォンをメインで使う方は47Ωのまま変更の必要はありません。
16Ωの方は10Ωに減らしたいところですが、あまりに減らすと発振しやすくなるので33でいいと思います。

電源LEDを黄色から緑に変更しました

LEDの波長が高くなることで、高域から中音域へのつながりがよく……なりません。


前の作例で黄色がついていましたが、微妙にテオティワカンもとい違和感がありました。
世の中のほとんどすべての電源LEDは緑です。
大体この40年くらい〜ここ5年はSONYを中心に青色が幅を利かすようなりましたが〜ずっと緑です。


ということで緑にしました。
これでHPAにチラッと目線をやったときも、なんか違う感がなくなります。



以上長くなりましたが改訂しました。
他にもGNDラインを太くしてオペアンプの下を通すとか、一点アースを心がけて基板パターンを引きなおすとかやりたいのですが、以前の作例の改造/訂正の範疇ではすまなくなるのでここまでにしました。
もし自分の作例を見て製作なさった方がおられましたら、お手数ですがなるべく訂正してみてください。
若干ですが、以前よりよりよくなります。
めんどくさいという方は、6pfのコンデンサのみ接続してください。
基板裏面から帰還抵抗に並列にハンダ付けするだけですみます。
これが一番安定動作に寄与する効果があり、なおかつ音質も本来のものになります。



なお、これらの変更点は、ディスクリートアンプやらA級アンプやらを作りたく、ブレットボード上で試行錯誤して気がつきました。
Trを出力段につけたアンプは、オペアンプ一個のChu-Moyより発振しやすいようで*6、何が駄目かわかりやすいです。
そして疑問に思ったら本を読んでサイト検索すると大体間違ってるところがわかります。
ネットがあってよかったです。





オペアンプを使った高精度レールスプリッタや、レールスプリッタ専用ICはつかわないの??

オペアンプは基本応答性能がトランジスタより遅いみたいなんですよ。
電源の応答性が遅いのはまずいんじゃないかな。
突然大音量が必要になるとき、ピアノの鍵盤をダーンと叩いたとき、いわゆる音色のアタック音の発生が遅れヌルい音になるんじゃないかな。
オシロスコープがないから他の方のHPの波形みるのが関の山ですけどね〜。


TiのTLE2426など専用ICは、何年か先になるとディスコン*7になる確立が高いし、一個250円もするし、吸出し吐き出し電流が±20mAで4580DDのカタログ限界±50mAにまったく足りてない。
つまり100Ωヘッドフォン使うとき音量とれないし、16Ωの低能率の奴使うときは少し音量上げると歪むよ。


だいたい数mVオーダーでGNDが揺れたところで、周りの音が聞こえないくらいの音量だしていれば気がつきゃしません。


なぜOPAやらLMEやらJFET入力の高性能オペアンプをつかわないの??

不景気なのに洋物なんかつかってられるか。
国産使いましょう。
なんてな。テヘッ。


まずきちんとしたアナログ知識に基づいて基板のパターン設計しないと、オペアンプのスペックシートにあるだけの低ノイズ性能はでません。
それを知ってるからプロの設計者たちは私たちを見てニヤニヤしているのです。
ハハハ。
電子工作レベルではある程度以上のスペックは一律同じで無駄なのです。
ホモロゲとるためだけに数100台だけ作ったランエボより、VitzRSの方が素人には向いています。
安くそれなりを目指しましょう。

ちなみに

TiのLMEシリーズ他の超ローノイズオペアンプ群ですが、あれらのノイズレベルは数nVレベルです。
基板をハンダづけしっぱなしで洗浄しないような、汚れた基板のパターン間で伝わる漏れ電流というものがあるそうですが、それにより発生する電圧(=ノイズ)の方がローノイズ・オペアンプのカタログ記載のノイズより大きいそうです。
つまり作りっぱだとまったく低ノイズ性能が生かせないってことらしいです。

5/5 ああ基板も駄目か

先日、新しく製作しているHPAにて、一点アース〜共通インピーダンスの低減〜の効果の実験を行ったところ、ようやく知識として知っていた概念と実際の効果/作用が合致しました。
そのつたない経験を担保にして、基板をチェックしてみたところ、駄目ポイントが三点ほどでてきました。
再度修正します。
結構変わるはずです。


こういうところが上記で書いたアナログの知識のなさって奴です。
これがあるとないとで音質やノイズがかわるわけです。


5/5夕方 やっぱり全体的にふわっとしたような感じがします

訂正修理直後なので、完成したぞー的バイアスはかかってますが、よくなったように思います。

  • 1815/1015の中点電圧GNDの入出力直近を、一点アースポイントに定めた。
  • 入力のジャックのGNDがL側信号のGNDに接続されていたのと、出力ジャックのGND*8がR側信号のGNDに戻ってきていたのを切り離し、一点アースポイントにつなぎなおした。
  • ボリュームGNDはLRまとめてR側信号GND*9に接続していましたが、きちんとL/R信号GNDそれぞれに振り分けた。
  • 上記修正に併せ、配線の取り回しの変更が必要になったので、若干変更。


きちんと一点アースを意識して、信号GNDと負荷GNDで共通インピーダンスが生じないようにしました。
音質的には、より情報量が増えてゴージャスというか、ふわっとする感じが増しています。
また、目を瞑って集中していると気がつく程度ですが、いくらか押し出しがよくなっていてギターやスネアが前より派手に聴こえます。
少し音量下げ気味でちょうどいいようです*10

5/6夜中 追記

以前は音量を大幅に絞ると音が混じって潰れてしまっていたような感触でしたが、修正後はそれぞれはっきりと分かれたままで鮮明に聴こえます。
これが一番の違いでしょうか。


他には、信号系GNDのL/Rをきっちり振り分けたのでRMAAでクロストークがよくなると思ったのですけども、こちらはほぼ変わりませんでした。
Stereo crosstalk


ということで、一点アースなる技*11を試してみたわけですが、先日からテストしている出力段にTrバッファをぶらさげたHPAほど劇的な変わりようではないものの、オペアンプ一個のChu-Moyでもそこそこ変わることが実感できました。
アンプ製作の先達が念仏のように唱えていた一点アースっていうものを、身をもって体験できただけでもやるだけの価値はあったようです。

ん!?これってどっかですげーしつこくやったような

いわゆる『アーシング』じゃねーか!!
そっちで言ってくれれば理解がはやかったのに……。

*1:ギャングエラー

*2:Bカープならいっぱい売ってますがAはないようです

*3:国産電気メーカーの大昔のアンプのZobelフィルタは大体400Khz〜800Khzです

*4:ZobelフィルタはLPFではない?

*5:ピークがでるというらしいです

*6:超高域で発振していると耳に突き刺すような痛みがあるしオペアンプが加熱している

*7:販売終了

*8:負荷抵抗のGND。ヘッドフォンに流れた大電流が戻ってくるここが一番ノイズ的に厳しいポイントらしい

*9:ヘッドフォンの戻り、つまり負荷抵抗のGNDに直結になってた

*10:つまり効率がよくなった??

*11:?