サウンドカードを調査してみる

昔、PCのオンボード音源がどうにもならなかった時代に、PCに刺していたサウンドカードをチェックしてみた。


12年くらい前の大昔*1YAMAHAのYMF7x4シリーズというチップが搭載されたサウンドカードがあった。
この時代の自作PCにはオンボードサウンドチップがなかったものが多かったし、あったとしてもノイズが載りまくりでどうしようもなかったが、最近のHD音源になってからはサウンド周りのアナログ回路もだいぶ改善されて、というかコストダウンでカットされていた部品がキチンと載るようになり、S/N比が100弱くらいなのはごく普通になった。
動画の音声やMP3などの圧縮音源を楽しむ程度には十分満足なレベルになり、どうしようもないほどのノイズまみれというのは既に過去のものだ。
というわけで、PCからはずしていたこのカードを手元に取り出し、ChuMoyヘッドフォンアンプを作成したりマザーボードの修理/改造をする過程で覚えた経験と知識でチェックしてみた。


AOPEN AW-744Pro Ver2.0(だったかな?)

定価\5000代の安価ながらノイズが少ないコストパフォーマンスに優れたアナログカード


基本的にサウンドカードは、サウンドチップに供給するデジタル電源と、音声コーデック供給するアナログ電源の二系統電源を利用する。
低価格帯、というか超高価格帯のカードでもなけけば、デジタル電源はPCIに流れている5Vもしくは3.3Vがそのまま使われるか、5VからLDOレギュレータ*2で3.3Vに降圧したものが使われる。
アナログ電源は+12Vから、おそらく78L05の5V用三端子レギュレータを利用し、12V->5Vに降圧したものが使われる。


ちなみに高価なONKYOのカードでは、高性能コンデンサーとしてOSコンが搭載されるが、このOSコンは『デジタル電源のデカップリング』として利用されている

訂正

カップリングで利用する場合と、オペアンプの-側電源を生成するために、+12V電源を-12Vに反転するために利用する場合があります。


ONKYOのOSコン搭載サウンドカード

(ONKYOのサイトから拝借。問題があるなら画像は削除します)
マザーボードからの電源には高周波のスイッチングノイズが載ってるが、これを手っ取り早く低減するのにOSコンは非常に有効。
ということでとりあえずNO-PCI的に『でかいのを一個』載せてあるようだ。
他にはデジタル光入出力に小容量のものを一個ずつ載せてあるが、角型光デジタルコネクタ(TOS-LINK)には5Vが必要なので、その電源の高周波ノイズの低減のために使われてるようだ。
こちらもあくまで『デジタル電源のデカップリング』である。


メインになるアナログブロックは、昔ながらにでかい電解と高性能フィルムコンデンサの組み合わせによる、古臭い物量電源回路のオペアンプ一発のアンプである。
その前にVLSC回路もあるけど、これはアクティブ型ローパスフィルタの類で、出力前のノイズカットに寄与するものであり、基本的な構成は前述のとおりです。
残念なことにトランジスタ*3が一個も使われてないところがなんか納得いかないというか、もう少し人力みせろよ頑張れよって気分である。
なにしろONKYOのミニコンポやセパレートタイプのアンプはいまだにディスクリート部品使ってるってのが売りですからね。
サウンドカードでも同等の売りがほしいですよね。


ちなみにが長かった。元のAOPENの俺のカードに戻ります。
次は音声コーデックの出力を受けるオペアンプについてである。
サウンドカードの出力品質は、このオペアンプ周辺の回路がどれだけオーディオ的に丁寧かできまってくる。
オペアンプそのものの性能よりは、コンデンサや抵抗などの定数設定が適切かの方が重要だと思う。


私のAOPENのAW-744では、TiのLM1458が使われている。

このオペアンプは結構古い製品ながら最大許容定格が400mWもある、かなり電流を流すことができる奴である。
オペアンプの内部回路の終段プッシュプル回路には、ショート防止回路も盛り込まれているので、出力抵抗などをつけずにそのまま出力ジャックにつないでもokのかなり便利な奴だ。
実際回路を調べてみると、出力はオペアンプの出力がそのまま出力ジャックにつながっている。
低コストで、ヘッドフォンもドライブできるだけの出力をもち、最低限のショート防止も盛り込みつつ、S/N比90db以上の高音質を実現するのにちょうどいいチップをチョイスし、必要最低限の外部部品でシンプルに組んである。
ここまではいい、なかなかの設計ではなかろうかと思う。
しかし、このオペアンプの電源は±12VからLCフィルタで高周波ノイズをカットしたものがそのまま入っている……。
リップルフィルタくらい入れれと思う。
オペアンプの駆動電流程度なら2SC2655くらいでいけるじゃん。


問題らしい問題というとは、オペアンプ周りのコンデンサが、すべてSMDの積層セラミックコンデンサというところだ。
カップリングコンも積セラである。
でも、音質的には特に問題がないような気がする、実際こんなんでも不満を感じたことはない。
あれ、俺の耳終わってるとか??
でもでも世の中には積層セラミックコンデンサメインで本気で組んだアンプもあるそうで、しかも音質もそうとうにいいそうで、私はそろそろなにがどうなれば完璧なのかわからなくなってきた。


ということで、3年前はさっぱりわからなかったサウンドカードの回路が、結構わかるようになってきた私なのでした。
というかよくよくみると『サウンドカードって、実は回路的にはたいしたことをまったくやっていない』のです。
もともと、設計がそれはそれは難しいところはサウンドチップとオペアンプの中に押し込められていて、既に半完成状態なのでした。

改造するならどうするか

  • デジタル電源にOSコンを一つだけ乗せ、デカップリング性能強化
  • 78L05前にLCフィルタを噛ませて高周波ノイズをカット
  • 78L05を7808に変更し、その後にトランジスタによるリップルフィルタを入れる
  • 出力段のオペアンプを高性能(低歪)のものに変更するため、回路一切を小亀基板に作り直し、音声コーデックの出力につなぎなおす。
  • いっそのことアナログ電源は、スイッチングノイズやリップルノイズのないニッカド電池など直流電池電源を使う。


たいていのオペアンプは出力抵抗RLが2KΩ以上でなければ本来の性能が発揮できない。
逆に言えば、入力インピーダンスが2KΩ以上のアンプに繋ぐ前提ならば、本来の性能が発揮できるということであるので、音声出力でヘッドフォンを直接ドライブしない前提で回路組めばいいはず。
実際、俺んちの増設サウンドカードは、外付けのアンプ内蔵スピーカにつなぐか、ヘッドフォンアンプに繋ぐかのどちらかで使われてきたので、それでまったく問題ない。



あとはやるかどうかだけである。

総括(日村さん的な)

私がChu-Moyヘッドフォンアンプを作成した理由は二つある。
カップリングコンデンサを経由しないオペアンプの出力直結の音が聴いてみたかったことと、サウンドカードの出力がヘッドフォンを駆動できないと思い込んでいたことだ。


今回AW744サウンドカードを調べてみたところ、電源周りのノイズ低減策や平滑状態が甘いなどいろいろ突っ込みどころはあるものの、少なくとも『上述の二点はクリアされている』のがわかった。
ヘッドフォンを繋げばLM1458オペアンプの出力の音を、そのままダイレクトに聴く事は最初から可能だったのである。
つまりこのサウンドカードには、上述した私の希望は当の昔に用意されていたのと、自分が思い込んでいた問題点はオペアンプの性能からしてありえないわけであり、私の試行錯誤はまったくの無駄なものだったということだ_no
もっともChu-Moyは非反転増幅回路で、こちらのサウンドカードは反転増幅回路という差はあるのだけども。


何年か前にこのカードを改造しようと考えて、『まずは出力カップリングの電解コンをオーディオグレードのものに交換しよう。テヘっ☆彡』とか思いながら、その出力カプを探してもこのカードにはついていないわけで、なぜついてないのかがはなはだ疑問で、その次にコンデンサを取り替えて音質を楽しむことができないのにがっかりしたわけだったが、ようやくその謎というか理由に気がつくに至ったわけです。
そりゃ正負電源入ってたら直流カットなんか必要ない罠。


まあでも、知識がついたことはプライスレスだと負け惜しみましょう。
これで、今後サウンド関係で無駄な買い物をすることも少なくなるはず。
ええ。
くそ。

*1:もうそんなに経ったか……

*2:低損失レギュレータ。780xレギュレータよりノイズ多目だと思う

*3:ディスクリート部品