NHKスペシャル 『戦慄の記録インパール』

久々にテレビ凄いと思った。


盆のNHK反戦系の番組ついでに左翼思想を植え付けようとする*1番組が多いので、気を付けてみないといけないと常々思っていますが、この番組に至っては「断片的な記録や証言を、時系列に沿って精緻に並べるだけ」でそれを達成できてしまう。それだけのこの世の地獄、あまりの惨状。
今までは米国から出てきた部外秘解除の資料から太平洋での海軍のありさまを題材にした番組がほとんどでしたから、今度はイギリスからの資料が出てきたようで、ほとんど詳細の伝えられてない大陸側の状態がようやく出てきたのには興味津々でみたら....もうね。
もっともインパール作戦の番組は過去いくつもありましたが、白骨街道での遺骨収集を兼ねてそのルートを辿るような番組ばかりで、軍隊の内情をつぶさに語る当事者の日記のような、ごく個人的な考えと思いを乗せた記録なんて見たことがないので、それを探し出して放送しただけでも驚嘆に値すると思います。

国家を一人の人間としてみると、いろいろ共通してる点があると思うんだよなぁ

番組を見ていると、どうも軍部上層部もこの作戦自体成功する見込みがないと思ってたらしいんだな。
実際にキツすぎる従軍に当たる兵隊はもちろん、当の牟田口中将も含めて。
それなのに、最終的には決行する方向に行ってしまう。


これを人間にたとえてみると、体中のいろんな神経感覚からその行為が極めて危険だとわかっているし、脳の中の様々な部位〜運動をつかさどる部分とか視覚神経をつかさどる部分とか〜部分的機能からもやっぱりうまく運ばないって伝えているのにも関わらず、人として意識〜脳全体の方向性、シナプスの集合が出した最終的な決定〜は、なぜかGOサインを出して行動に移してしまうみたいな。
実際それで失敗して、骨を折って大怪我したり、財産全部吸って大損したりとか、ろくな目に合わないことは行動を起こす前に予測できてるにも関わらず、なぜかやってしまう。
どういうわけか、それに極めて似ていると思いました。



よく聞く意見としては上層部が無能すぎて、集団全体がブラック化してたのが問題だとかあります。逆に言えば首脳部が有能ならば勝てたってことですわな。
でも上層部の人間は集団全体からみればごくごく少数でありまして、集団全体の存続すら危ぶまれるほどに無謀な行為ならば、下のものが徒党を組んで上層部をいてこまして挿げ替えてしまうこともできたと思います。
そう思いますが、結局のところ誰もそれをやらなかった。
いや、やらなかった、できなかったのでもないのかも。


個人としての意見はさまざまあったとしても、集団全体の意思が一つ決まり一方に向かうことになったのなら、もうそこで大きなうねりみたいなもの生じる。
そうなれば、だれがどう考えようとどうにかしようと反乱を起こそうとも、そのうねりは止められるものではない。
止められるのは、圧倒的な外的な力でそのすべてをフっ飛ばした時と、集団が維持できなくなるくらいリソースをカットされたときだけで。
前者は太平洋戦争全体〜当時の日本の全体的な意識〜は米軍の核爆弾で、後者のインパール兵站軽視によって、ようやく止まったみたいな。


結局、誰もが辞めてしまいたいと思っているのに、最後の最後まで方向転換ができずに辞められなかったところに、本当の怖さがあると思います。

次は、南中国戦線の内情が出てくるといいけどなぁ。

現中国政府はそういう資料とか持ってんだろうか。
なさそうだなぁ。
太平洋戦争末期、まともに勝ててたのは南中国戦線の陸軍だけで、日本が無条件降伏した後も最後の最後まで徹底抗戦しようと息巻いてたのもそこだけだったそうな。

*1:と私は勝手に思っている