NHKの太平洋戦争モノ3番組


すべてにおいて超面白かった。
日本語で面白かった(fun)というと不適切かもしれない。
とにかく興味深かった(interesting)の方です。


太平洋戦争に従軍した記憶のある人物は病気や寿命にて続々と亡くなって、いまやその人が直接経験した現実の光景を知ることはこういう記録映像が頼りになってます。
放映されたときはチャンスですからきっちり録画してみるしかない。


上述の映像は、取材対象がそれぞれことなってます。
軸になるトピックも違えば、それにかかわる人物の社会的な立場もまったくちがいます。
それでも、どの立場にある人物にたいしても戦争の現実は容赦なく襲い掛かり、それぞれの人間の人生を簡単に右に左にとなぎ倒す。
またこれらに登場する人物は、まず例外なく戦争という現実に対して『おかしい』という疑問を抱えているにもかかわらず、その発言が時勢的に許されない。
よしんば発言できたり文章として文藝雑誌に投稿できたとしても、それを盾にして不要な争いをさけたり、家族や自分の身をまもったりなど一切できなかったことがわかります。


ペンがなんの役にもたたかなったし、個人の想いなんかもやはりなんにもならなかった。
そんな余裕のない時代の、朝飯と夕飯の間にあった話です。

障害者まで駆り立てられる

視覚障害者は、健常者に比較して耳が敏感だからと、夜間の防空索敵任務をやらされる。
ブーンという敵国の戦闘機のエンジン音を録音したレコードを聴いて覚え、どの機種が飛んできたかをいち早く知らせるまさかの人間レーダー。
竹やりもってB29と同じ発想だけど、こちらは意外にも索敵能力が高く健常者からも一目置かれて信頼されてたのが、笑えない事実なのである。
それ以外の大半は、軍需工場に動員された工員〜企業戦士〜の慰問として按摩や針をやらされた。
企業戦士*1の疲れを取ることで生産性アップにつながる。それは間接的にお国のためになってるという考え方である。
聴覚障害者は軍需工場で部品の鑢がけ。ただしなぜか12歳から動員(基本学徒は15歳から)される。
戦後末期では軽度の知的障害者も重用されたそうな。
詳しい内容は一切語られなかったけど、体育会系の縦型の命令系統の集団に、わざとじゃなくとも集団行動を乱す人物が入ってきたら、どういう立場に置かれてどのような仕事や待遇になるかは容易に想像がつく。
精神障害者はさすがに動員されないが、戦後の食料難で配給が滞り松沢病院の昭和45年の院内の患者死亡率は40%を越した。ほとんど栄養失調が原因で。

二重スパイの名がラットランド

F. J. Rutlandとかいう元英国空軍のエースで、日本の航空隊のコーチまで務めた人物が、まさかの二重スパイだったそうです。


苗字の音だけ聞くとラットランド、つまりネズミ王国(ratland)です。
前がF(reedom). J(apan).って無理やりあててみると、米日のネズミってことになります。
名は体を表すってのは、なにも日本国内に限ったこっちゃないんですね。

三式戦車は走らない

福田定一*2が所属した戦車第一連隊で使った三式戦車は、8ヶ月の訓練期間中一度も走らなかったそうな。
司馬は戦車の質を疑問に感じ、砲塔を鑢で削るとあっさり削れたそうな。
鑢で削れるような、なまくらな材質の戦車で、戦えっていう現実に、司馬は絶望や裏切られた気持ちを感じたみたいです*3



そういや立川談志も、玉音放送聴いてから教科書を黒く塗りつぶすようなことをやらされる中で、国に痛切に裏切られた、全部嘘っぱちだとか感じて、学歴つけて嘘ついてた連中の管轄する社会人になるのではなく、噺家歴つけてそいつらの嘘みんな看破して笑いものにしてやるみたいなことを、インタビュー映像で語ってたなぁ。


みんなさんなにかしら戦争で回復不能なまでの精神的な傷を負わされてるんですねぇ。
どうにもこうにもテレビ越しに見て聞いてるだけでも重過ぎる。

最後に付け加えるとしたら、これらの映像は多分全部左巻き

右巻きのものもHD画質でプロのナレーションで見たいもんだ

*1:しかしこの単語、バブル時代にリゲイン売るためにCMで登場したのが初めてじゃなかったんですね。それもまた驚愕の事実

*2:司馬の本名

*3:GuPなら改造して超絶強化して使うんだろうなぁ