13/02/09追記 DVD-ROMやMOが満足に動かなかった理由

いまさらですが、電源分解してコンデンサはずして、ちょっと回路書いて調べたら大体理解できました。
熱によるコンデンサの劣化に、安物電源の無理な12V二系統構成のダブルパンチが原因です。


ほとんどのPCの電源*1は、フライバック(RCC)方式のスイッチング電源がつかわれています。
でかいトロイダルコイルとダイオードそれに低Zのコンデンサの三点の回路を、ごく短い時間でOn/Offすることにより、100Vを細切れにして12Vなどに大雑把に電圧を落とす方式です*2
トランジスタやFETなど電源用半導体をOn/Offするところが、スイッチのOn/Offに相当するのでスイッチング電源といわれます。


上記の回路で生成される電圧は大雑把に12Vというのがポイントです。
ごく短い時間でスイッチングしまくるので、実際は三角形のギザギザの波形になります。
これが12Vの自動車のバッテリーならば大体12.5V程度でまっ平らでなんの問題もないのですが、AC100Vから変態的な手段でDC12Vを作ってるのでそうなってしまいます。


これをどうにかする手段の一つが、コンデンサに性能のいいものを利用することです。
ここでいう性能というのはESRが低いというものです。
ESRは検索すればでてきますが、ようするに交流を通すときの抵抗値です。
このESRが低ければスイッチング時に発生するリップル電流をたくさん流すことができます。
オームの法則はV=IxRで、リップル電圧=リップル電流xESRになります。
ESRが小さければ、リップル電圧も小さいので、平滑後の波形は平らに近くなります。


で、能書きが長かったのですけども、コンデンサが劣化するとなにがどうなるかというとこのESRが増大するんですね。
さまざまなサイトを読んでみると、PC改造系サイトではだいたい一律でコンデンサの容量が減るで終わってますが、電子工作系のサイトで部品に詳しいところをを読むと、容量が減らないものも多く一見正常だが、ESR値は一律に増大するのでESRで劣化を確認できるとの一文があります。
劣化したコンデンサでESRが増大しそれによってリップル電圧が増大すると、12Vの電圧の上下の変動幅が大きくなり、かくして電圧波形をオシロスコープで見るとギザギザの三角波に近くなっていると想像できます。


電子機器を正常に動作させるには、要求する電圧を守るとともに、許容される電圧の変動幅を下回る必要があります。その幅を突破するくらいに電圧が上下すると、正常動作しないばかりかそのうち壊れてしまいます。
最近のHDDや、PCの電源を信用していない高価な光学ドライブは、基板上の電源の入力コネクタのあたりにLCフィルタや三端子フィルタなど電源のノイズを減らすような回路が基板上に乗ってます。
これらはギザギザの電源入れてもなんとか動きますが、そうでない安物だったり電源の安定性に依存した設計のドライブの場合は、HDDならカッコーンと鳴いてみたり、DVD-Rならx16倍で焼けなくなったり焼けても生焼けが大量に出たり、CDは読めるけどDVDが読めなくなったりするわけにつながるのだと思います。



さらに悪かったのはこの電源の12Vの構成です。
カタログでは12Vが二系統ということになっているのですが、分解してみるとどう見ても一系統です。
一系統の回路なのに、ケーブルをつなぐ箇所を二つに分けることで二系統と言い張っているのです。
ドライブ類の電源になる+12V1は、上述の三点の部品により平滑した直後から取り、CPUやVGAの電源になる+12V2は、+12V1にコイルと低ZコンデンサによるLCフィルタをかけた後から取っています。
LCフィルタというのは、高周波ノイズを取り綺麗にする回路です。
平滑後の電圧波形をごく短時間に拡大してみると、ささくれ立ったリボンのように細かいぎざぎざがあるのですが、それを小さくし目立たなくできます。
この綺麗な波形になった+12V2はマザーボードに入り、マザーボード上のVRM回路でCPUが利用する3.3Vや1.4V、メモリの使う2.5Vなどにさらに落とされます。
マザーのVRM回路やコンデンサは、CPUを絶対に壊さないように、もともとかなり質のいい回路とコンデンサが使われています。
電源がだいぶ劣化しても、+12V2を入れるCPUまわりはマザーのVRM部が踏ん張っていたおかげでどうに動いていたがし、ドライブ類の制御回路が動く5V系は問題なかったからマイコンピュータのプロパティではなんら問題はなかったけど、+12V1を入れてドライブのモータ類は満足に回らず全滅状態だったということになるのと。
そう思いましたとさ。



最後に、最近の安物電源は12V系が一系統のものが増えてきました。
最近流行のVGA内蔵CPUは、極端に消費電力が減って田コネクタが必要なくなったこともありますが、私のようなトラブルでクレームがあったから、LCフィルタ抜きの12Vをコネクタに出すのを辞めたのかもしれません。
電源が劣化したとしても、12Vが一系統ならばドライブが誤動作する以前に、PC起動時が不安定になる*3はずなので、すぐに電源を買い換えに走ると思います。
ドライブが壊れて買い換えるなどの不幸に見舞われる前に対策できるので親切ですよね。

で、能書きはいいから電源を修理するのかよ、というと…

中台コンデンサ利用の電源では、あとから日本製のコンデンサに交換して新品同様という技が使えません。


台湾製コンデンサはなぜか細いのです。
2200uF/10Vや2200uF/16Vはともにφ10です。
メーカーのカタログPDFを読んでみると標準品がそのサイズなのです。
対して日本メーカー製は標準品で大体ひとまわり太いんですね。
上記の容量ならばφ12.5になります。
一次側に使われている1000uF/200Vのでかいコンデンサなんか、22.5φとありえない細さです。
日本製の小型標準品でも30φですんで、どうやっても取り付け不能です。


日本製の部品が取り付けられるように基板に余裕があればいいのですが、ギチギチに詰めてあるのですよ。
そりゃ誰も半田ごて作業前提で電源作ったりしないから正しい判断です。
大電流が流れる部品を浮かせて取り付けるなんてリアル火事につながりるので結局交換は無理です。残念無念。


単純に体積がでかいほうが容量にも余裕があり*4リップル電流の流せる量も増えるはずだし、電解液の量も多くなりドライアップにも強くなるはずです。
なんで細いんですかねぇ。

*1:というか安価な家電の電源

*2:実際にはその後にLCフィルタが入り高周波ノイズを低減して完成です

*3:メモリやCPUコアの大電力が足りなくなる

*4:日本製の電解コンデンサは新品で記載容量値+20%くらいある